2025年に公開される話題の映画『遠い山なみの光』では、広瀬すずと吉田羊という実力派女優が、一人の女性「悦子」を異なる時代で演じる“二人一役”という大胆な演出が話題を呼んでいます。
時代を超えて描かれる一人の女性の内面は、どのような重なりと乖離を見せるのか。
本記事では、この二人一役がもたらす人物像の深みと演技表現の妙について考察します。
『遠い山なみの光』とは──原作と映画の概要
『遠い山なみの光』は、ノーベル文学賞作家カズオ・イシグロによる同名小説を原作とした作品です。原作では、戦後の長崎とイギリスでの生活を交差させながら、記憶と喪失を描き出しています。映画版ではこの物語を大胆に再構成し、日本を舞台にした完全オリジナルの構成が施されており、視点や時代の変化を通して一人の女性「悦子」の人生を多角的に映し出しています。
監督は、静謐で深い人物描写に定評のある是枝裕和氏。彼の手によって“語られない感情”が映像の間(ま)で語られるような構成がなされ、観客に委ねられる解釈の余地が特徴です。
“二人一役”という演出が持つ意味
本作最大の演出的特徴は、“二人一役”という手法です。これは、一人の人物を異なる俳優が演じることで、時代や記憶、心理的距離の表現を可能にする演出技法であり、舞台演劇などでは過去にも活用されてきました。
過去の映画でも『今度は愛妻家』(2010年)や『ミス・サイゴン』などでこの手法が見られますが、本作においてはより象徴的で内省的な意味を持ちます。悦子という人物を、若い時代は広瀬すずが、現在は吉田羊が演じることで、同じ人物が持つ変容と一貫性を巧みに描き分けているのです。
広瀬すずが演じる「若き日の悦子」──抑制と情熱の狭間
広瀬すずは『海街diary』『ちはやふる』『一度死んでみた』など、幅広いジャンルで存在感を放ってきました。本作では、若き日の悦子という繊細な役柄に挑戦しています。彼女が演じる悦子は、時代の制約の中で理想と現実に揺れる姿を抑制された演技で体現しており、特に目の演技や呼吸のリズムに注目が集まっています。
彼女の演技には“何かを言いかけて飲み込む”ような間があり、それが悦子の内面に潜む葛藤や未熟さを表現しています。無垢でありながらも、どこか影を感じさせる演技は、広瀬すずの女優としての新たな到達点とも言えるでしょう。
吉田羊が演じる「現在の悦子」──過去を抱えた成熟した女性像
吉田羊はこれまでに『コウノドリ』(2015年)、『愛を乞うひと』(2017年)、『母になる』(2017年)など、感情の深淵に迫る役柄で評価を得てきました。本作では、広瀬すずが演じた悦子の“その後”を演じる形になりますが、直接的な続きではなく、記憶や時間の解釈を観客に委ねる構成となっています。
彼女の演技は、視線の揺らぎや沈黙の重さといった“語らない演技”にあります。広瀬が見せた若さゆえの激情に対し、吉田は経験によって形成された諦念や強さを織り交ぜた表現で、悦子という人物に新たな次元を加えています。
広瀬すずと吉田羊、二人の演技が交差する瞬間
映画では、明確に二人が同じシーンに登場するわけではありません。しかし、演出と編集によって、観客の中で二人の悦子が交差する瞬間が創出されています。たとえば、ある象徴的な仕草やフレーズが、過去と現在で繰り返されることで、悦子という人物の核心に迫る構造が浮かび上がるのです。
また、二人が共通して用いる視線の動かし方や沈黙の間には、演技プランの統一が見られ、監督による細やかな演技指導の成果と考えられます。この演技の“つながり”が、観客の心に長く残る余韻を生み出しているのです。
“悦子”というキャラクターの多層性
“悦子”という人物は、単に一人の女性の人生を追う存在ではありません。彼女は記憶と後悔、希望と喪失というテーマを象徴する存在でもあり、その多層性を俳優二人がそれぞれの視点から描き分けています。
映画では「語られないこと」こそが大きなテーマであり、二人一役によって“語られなかった時間”が可視化されているとも言えるでしょう。この手法によって、観客は悦子という人物を一面的ではなく、多角的に捉えることが可能となっています。
U-NEXTでの視聴方法と作品の注目ポイント
本作『遠い山なみの光』は、U-NEXTでの配信される予定です。U-NEXTでは、広瀬すず出演作(『ちはやふる』シリーズ、『海街diary』など)や、吉田羊出演作(『愛を乞うひと』『コウノドリ』など)も多数配信中で、彼女たちの過去作品を振り返ることも可能です。
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結論
『遠い山なみの光』における広瀬すずと吉田羊の“二人一役”は、ただの演出手法を超えて、人物の内面や記憶の曖昧さまでも浮かび上がらせる表現でした。異なる演技アプローチが重なり合うことで、悦子という女性の人生がより複雑で深いものとして描かれていきます。二人の演技を通して見えてくる“人間の本質”に、ぜひ注目してみてください。
FAQ
Q1:広瀬すずと吉田羊が“二人一役”を演じるのはなぜですか?
物語が時間軸を行き来する構造であるため、若き日と現在の悦子を異なる俳優が演じることで、視覚的にも精神的にも人物の変容を強調する演出となっています。
Q2:映画『遠い山なみの光』の原作との違いはありますか?
カズオ・イシグロの原作は英国を舞台にしていますが、映画では舞台を日本に移し、悦子という人物の内面描写に焦点を当てたアレンジが加えられています。
Q3:広瀬すずと吉田羊に共演歴はありますか?
本作が初の本格的な共演ですが、“直接共演しない”という構造が、演技上の対話をより印象的に演出しています。
Q4:U-NEXTで見られる広瀬すずのおすすめ作品は?
『海街diary』『ちはやふる』三部作、『一度死んでみた』などがU-NEXTで配信中。彼女の成長を追うには絶好のラインナップです。
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