【阿部寛が演じる“父の覚悟”】『俺ではない炎上』で描かれる家族の真実

2025年9月に公開される映画『俺ではない炎上』は、SNS社会の闇と冤罪の恐怖を描く社会派サスペンスである。

本作の主人公・渡会誠一を演じるのは、数々の映画・ドラマで重厚な父親像を体現してきた俳優・阿部寛。

今回は「家族を守る父」というテーマを軸に、彼の演技や過去作との比較、共演者との関係性、そして本作が突きつける社会的メッセージについて深掘りしていく。

『俺ではない炎上』のあらすじと社会的テーマ

物語の発端は、女子大生が殺害されたある事件。世間の関心はすぐさまSNSに波及し、無関係であるはずの主人公の娘に「犯人ではないか」という疑惑が向けられていく。証拠もなく拡散される情報、過剰な正義感による集団心理、そしてそれに晒される家族たち。

この作品は、原作者・浅倉秋成が描く冤罪の不条理さと、ネット社会における“断罪文化”を鋭く批判するものだ。観客は、無関係な者がいかにして社会的に抹殺されていくか、その過程をリアルに追体験することになる。

阿部寛が演じる渡会誠一は、一般的な中年男性でありながら、愛する娘が容疑者として扱われるという非日常に巻き込まれる。職業は中堅企業の営業課長、性格は実直で家族思い。しかし、事件をきっかけに彼の生活は一変し、仕事を失い、妻や娘との関係にもヒビが入る。

注目すべきは、阿部寛の演技ににじむ“父親としての覚悟”だ。自らの身を犠牲にしてでも娘を守ろうとする姿勢、正義と現実の間で揺れる苦悩の表情。彼の演技が、観客にリアルな恐怖と共感を与える。

阿部寛はこれまでにも、父親役を演じてきた。

これらの作品と比べると、『俺ではない炎上』での父親像はより重厚で現実味にあふれている。阿部寛のキャリアの中でも、特に心理描写の深さが求められる役と言える。

妻・由美子役を演じるのは石田ゆり子。阿部寛とは『新参者』（2010年）以来の再共演となる。長年の信頼関係があるからこそ、夫婦間のリアルな距離感や対話が自然に描かれている。

娘・結菜役には、若手注目株の福本莉子。実年齢差があるにもかかわらず、阿部との親子役に違和感はない。むしろ、互いの信頼感と演技力が相乗効果を生み、観客に強い感情移入を促す。

警察官役として登場するのは佐藤浩市。阿部寛と佐藤浩市は映画『麒麟の翼』（2012年）でも共演しており、再び緊張感ある対峙シーンが期待される。

映画雑誌『キネマ旬報』（2025年8月号）にて、阿部寛はこのように語っている。

「今の時代、正しさが一方向から押し寄せてくる怖さがある。だからこそ、親としての目線で“信じる力”を届けたかった」

この発言からも、阿部が単に役を演じるのではなく、現代社会に対するメッセージを込めていることがわかる。彼の“父”としての姿勢は、単なる演技ではなく、人生哲学に裏打ちされたものだ。

映画のタイトル『俺ではない炎上』は、まさに“加害者に仕立てられた無実の人間の叫び”である。

現代のSNS社会では、一度広がった情報は取り返しがつかない。疑惑が事実かどうかに関係なく、「炎上」した者は社会的に排除される。本作はその恐ろしさを可視化し、私たちが無意識に参加しているかもしれない“断罪のシステム”を見つめ直させる。

誰もが「俺ではない」と叫ぶ可能性がある──それがこの映画の本質だ。

『俺ではない炎上』は、社会的テーマに鋭く切り込みつつ、家族の絆という普遍的なテーマに帰結する。

阿部寛の演技は、その重厚なメッセージを観客に届ける触媒となり、現代社会への警鐘を鳴らしている。家族を守るとはどういうことか、正義とは誰が決めるのか──それらの問いが、深い余韻を残す。

冤罪、炎上、そして家族。今、最も観るべき社会派ドラマ映画のひとつと言えるだろう。

A1：女子大生の父・渡会誠一を演じ、娘が無実の罪をSNSで着せられる中、家族を守るために奮闘する。

A2：これまでの父親像よりも重厚かつシリアス。社会問題に真正面から向き合う覚悟がにじむ。

A3：妻や娘だけでなく、警察やマスコミと緊張感のあるやり取りが描かれ、孤立する父親像が強調される。

A4：公開後の見逃し配信はU-NEXTが有力。U-NEXTでは阿部寛出演の過去作も多数配信中。

映画『俺ではない炎上』の公開後、配信はU-NEXTで予定される可能性が高いです。

現在U-NEXTでは、阿部寛の代表作『とんび』『新参者』『テルマエ・ロマエ』なども視聴可能。

▶️ 31日間無料トライアルで阿部寛作品を一気見するならこちら： U-NEXT公式サイト

※配信状況は変更される場合があります。